Japanese
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特集 重度外傷
剖検からみた重度外傷—特にFat Embolismについて
A morbid anatomical study on the serious multiple injuries and considerations with reference to the fat embolism
河野 林
1
Rin KOHNO
1
1東京都監察医務院
pp.877-884
発行日 1976年7月20日
Published Date 1976/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206544
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はじめに
ここに検索の対象とした重度外傷例は凡て多重外傷例で,2例を除き交通事故と高所からの転落事故によるものである.剖検上の主損傷に基づき,頭部損傷群,胸部損傷群,腹部損傷群,骨盤損傷群,四肢損傷群に分け,主損傷と合併損傷,生存時間との関係を表示した.合併損傷としては骨盤,四肢の骨折が多く,皮下脂肪織,筋組織の挫傷も強いため肺,脳の脂肪塞栓(以下FEと略記)は必発である,さらに圧挫症候群ないしショック腎として腎障害も著明であるが,腎障害は組織学的に受傷後3〜5日目頃から最高に達し,2週間目頃から尿細管上皮の再生が始まり,機能の改善もみられ,回復の兆があり,FEによる脳傷害よりは医療効果は大である.
FEは受傷後,短時日の死亡では損傷自体が重篤で死因に関与することよりは,むしろ受傷時の生活反応の一部にすぎない.FEが直接死因となるのは骨盤,四肢が主損傷である時であるが,この時でも生前は閉鎖性頭部損傷が疑われ,処置される.頭部損傷がないのに,また軽少であるのに意識の回復しない例や無症状期後の持続性意識障害,意識回復後の精神障害の強い例,あるいは植物症化をみる例などにFEによる肺・脳傷害が著明である1).
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