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外科の焦点
迷走神経部分的保存胃全摘術—胃全摘術後の後遺症への新しい対策
Total gastrectomy with preservation of the hepatic and celiac vagi:A countermeasure against postvagotomy syndrome following total gastrectomy
淵本 悍
1
,
石上 浩一
1
,
藤井 正隆
1
,
渡辺 政徳
1
,
江上 富康
1
,
山時 好郎
1
,
津江 満麿
Takeshi FUCHIMOTO
1
1山口大学医学部第2外科
pp.1023-1029
発行日 1971年7月20日
Published Date 1971/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205390
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はじめに
近年,胃癌根治手術において胃全摘術が積極的に施行されるようになつたが,胃全摘後には,無胃性貧血,逆流性食道炎,ダンピング症候群,肝機能障害,下痢などの無胃性症候群20)といわれる後遺症が発生することが知られている.このような術後障害を軽減するために手術手技の面からいろいろのくふうがなされているが,これらはすべて胃全摘後の消化管再建方式の改良という点にむけられている.
ひるがえつて,現在の胃全摘術においては一般に迷走神経は前・後幹とも食道下端において切断されているが,胃全摘後に発生する障害のうち下痢,逆流性食道炎,ダンピング症候群,脂肪吸収不良などには,迷走神経切断(以下迷切と略記)による膵,胆道系,腸管に対する迷走神経支配の脱落が関与しうることが想像される.したがつて,胃全摘に際し胃外迷走神経を保存することができれば,これらの術後障害をある程度防止しうるのではないかと考えられるが,このような観点から,石上は京大木村教授の創意にもとづき,迷走神経肝枝および後腹腔枝を保存する迷走神経部分的保存胃全摘術式を案出した8)10).
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