Japanese
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講座・4
腹部外科と動脈撮影—Ⅳ.消化管および腹膜の腫瘍
Abdominal surgery and selective arteriography:Ⅳ.Angiograms in tumor of the gastrointestinal tract and peritoneum
鈴木 敵
1
,
川部 克巳
1
Takashi SUZUKI
1
1京都大学医学部第1外科
pp.689-695
発行日 1971年4月20日
Published Date 1971/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205352
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はじめに
動脈撮影は手技もやや煩雑で患者の苦痛も無視できないし,偶発事故の発症も現行の他の検査法と比較すると決してすくなくない.それでもなお本法に執着せざるを得ないのは内視鏡とかBaレ線透視など卓越した診断技法を駆使しても,なおこれらのみでは病変を照準内にきめることのできない部分が存在するからにほかならない.その代表的なものとして,前回と前々回において肝臓および膵臓など実質性臓器の疾患を対象に論じた.一方非実質性臓器の病変についても動脈撮影が診断的適応となる場合もすくなくなく,たとえば消化管粘膜下腫瘍や腹膜腫瘍などがあり,また胃癌や大腸癌などでもその病巣の周囲への拡がりや術式を決定する上に動脈撮影がきわめて有用な場合もある.また消化管切除後の癌腫再発の有無をチエックするのにroutineの方法では不明確のような場合本法は試みられるべき余地が残されている.頻度からいえば,腹部の腫瘍はいうまでもなく消化管粘膜起源のものが圧倒的に多いわけであるが,これらに対して動脈撮影はまず補助的診断法の域をでず,したがつてその血管像をとりあげても診断学的見地からはやや意義に欠けるごとくである.そこで本稿では粘膜下腫瘍や腹膜腫瘍など比較的すくない疾患が主体となるが,その疾患同定の上に動脈撮影が非常に有用であつた個々の症例を呈示しつつ若干の考按を加えたい.最後に誤診例にもふれて,動脈撮影の限界などにも言及した.
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