Japanese
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境界領域
動脈硬化症,高血圧症患者に対する手術
Surgery in patients with arteriosclerotic or hypertensive lesion
林 四郎
1
Shiro HAYASHI
1
1信州大学医学部・外科
pp.161-169
発行日 1971年1月20日
Published Date 1971/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205296
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はじめに
患者にとつても,また外科医,麻酔医にとつても,手術を受ける生体ができるだけ良い状態にあることが望ましいことには異論はないが,現実にはそのような都合のよい条件下の手術ばかりを期待することはできない.今から20年ぐらい以前,筆者が外科医の1人として歩み出した当時,胃切除術など,上腹部の手術もほとんど腰椎麻酔の下で行なわれていた時点では,術中の管理も不十分であつたし,輸液材料も生理食塩水,リンゲル液,5%ブドウ糖液が主体であり,また降圧剤や速効性のヂギタリス剤も入手し難い状態であつたため,重症な動脈硬化症や,高血圧症を合併していた患者に対する手術は敬遠され,今日では根治手術が当然可能であつたような症例に対して,姑息的な治療を行なうことに止まつたことも決して稀ではなかつたことを今日でもよく覚えている.これに対して,これらの異常に対してあまり危惧の念も抱かれずに手術が行なわれている現状を眺めていると,文字通り今昔の感に耐えない.しかしここで十分に考えていなければならない点は手術後の病態は原則的には20年前と今日との間で特別な違いがないということであろう.
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