講座
高血圧と動脈硬化
大島 研三
1
1日本大学
pp.6-10
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909704
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はしがき
こゝにこの問題をとり挙げる理由は,動脈硬化の発生機序を知つていなければ高血圧の治療は充分目的を達することができないからである。平素の血圧が余り著しくは高くなくて突然脳出血で斃れる人があり,また40歳台ですでに動脈硬化性の心疾患で重篤な状態に陥る人がある。一方また血圧が著しく高いのに,その後十数年にわたつて卒中発作に見舞われることもなく,また心臓の合併症をきたすこともなく,見かけ上健康といつて良い状態を維持する人もある。これらの個人差は従来血管系統の遺伝的の素因によるものとせられ血圧値そのものとは密接な関係はないものとされたが,しかし,これを遺伝として片づけたのでは治療の進歩は得られない。とくに冠状動脈および脳動脈の硬化による死因が,われわれの死因のうちの大きな%を占めるに至つたので,近時この方面の研究が行われ,治療面にも若干の知見を追加し得るに至つた。
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