Japanese
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特集 腫瘍の病理と臨床
論説と症例
先天性脊髄硬膜外嚢腫について
Congenital spinal extradural cyst
新名 正由
1
,
富田 勧
2
Masayuki SINMEI
1
1慶応義塾大学医学部整形外科学教室
2高岡市民病院整形外科
pp.959-968
発行日 1970年7月20日
Published Date 1970/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205145
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はじめに
脊髄硬膜外に発生する嚢腫のうち皮様嚢腫,ecchin-ococcus,炎症性嚢腫等は比較的良く知られているが,先天性発生と考えられる髄膜嚢腫の報告は稀である.Elsberg等(1934)は250例の脊髄腫瘍中3例,Lom-bardi(1962)は290例中3例,教室泉田等(1966)の報告でも93例中1例をみるに過ぎず,全脊髄腫瘍中における発生頻度は1.1%である.
本疾患の最初の報告者はSchlesinger(1898)とも,Mixter(1932)ともいわれ明らかではないが,その臨床像,病理,成因等に関する詳細な報告はElsbergによつて始めてなされた.彼は"脊髄硬膜外嚢腫は,思春期男子の胸椎中,下部に好発し,下肢の痙性麻痺,亀背形成,軽度の知覚障害を主症状とし,疼痛はみられず,その発生は先天性髄膜憩室または先天性の硬膜欠損部よりの蜘蛛膜ヘルニアである"と述べている.Lehman(1935)は著明な後彎および症状の自然寛解を認めた症例を,Cloward等(1937)はkyphosis dorsalis juvenilisとの関係について言及し,成人の腰椎部に発生した嚢腫例を報告している.Mayfield(1942)は外傷が症状の発現を促進すると述べ,Hyndman(1946),Nugent(1959)等は成因に関する考察を行なつている.
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