Japanese
English
特集 特殊な輸血とその現況
人工赤血球への一研究
One research for artificial red blood cell
関口 弥
1
Wataru SEKIGUCHI
1
1東京大学医学部第二外科
pp.73-79
発行日 1970年1月20日
Published Date 1970/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205016
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
近年,出血性ショックの病態生理が解明されるにつれ,plasma-expanderに関する研究は著るしく発展した.また,人工心肺装置の充填液としても有用性がみとめられ,現在では血液不足と相まつて,plasma-expanderの価値はますます増加して来ている.しかるに一方,これらの使用による副作用と思われる諸現象が報告されるようになり,不必要な過剰投与を反省する機運も出はじめている.すなわち,plasma-expanderはあくまで循環血漿量と膠質滲透圧を一時的に補うものであって,大量投与,または無計画な連用は,生体に対し,種々の障害を与え得ることを再確認する必要にせまられている1).
ところで,術後,特に癌などの消耗性疾患の患者においては,輸血を行なつた場合と,血液不足あるいは血清肝炎を恐れて輸血を行なわれず,plasma-expanderのみを使用した場合とで,術後経過にかなり差が出て来ることは,われわれ外科医のよく経験するところである.これは輸血に際し注入される蛋白源としての血漿の果す役割に負うところが大きいが,それ以上に赤血球の持っoxygen carrierとしての働き,pH-regulaterとしての作用を忘れることは出来まい.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.