Japanese
English
特集 緊急手術の手技・Ⅰ
食道静脈瘤出血
Emergency treatment of bleeding esophageal varices
板谷 博之
1
Hiroyuki ITAYA
1
1大阪医科大学第二外科
pp.1231-1235
発行日 1969年9月20日
Published Date 1969/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204933
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はじめに
門脈圧亢進症における食道静脈瘤からの出血は,現在でもなお,すべての上部消化管出血のうちでもつとも迅速,適切な治療が要求される重篤な合併症の一つである.とくに肝硬変症の場合には,一旦出血すると止血がしばしば困難で,大量出血,をきたして出血死となり易く,たとえ死をまぬがれたとしても,出血による低血圧のため肝への血流が減少し,既存の肝障害はさらに悪化し,加うるに胃腸管への出血により生じた毒素の肝での解毒が十分に行なわれず,高アンモニア血症をきたし,肝性昏睡により死亡する危険性もきわめて大きい.急性食道出血例に対しては,輸血,Pitressin点滴注射,Sengstaken-Blakemore TubeにょるBalloon Tamponadeなどの保存的療法,あるいは胸管ドレナージなどをまず試みて止血をはかり,止血困難な症例に対しては,時期を失することなく,全身状態の許す限り外科的救急処置を行なう,というのが現在一般にとられている方針である.Orloff1)は1942年から1962年までの20年間に,食道静脈瘤出血に対してなされた保存的治療と外科的治療に関する諸家の成績を比較検討した結果,前者の死亡率65%に対し,後者は30〜40%であったところから,救急処置としては矢張り外科的治療を優先すべきであるとしている.
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