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特集 人工臓器への歩み
人工弁—その問題点と改良の歩み
Artificial cardiac valve: It's difficulties and resolusion
新井 達太
1
Tatsuta ARAI
1
1東京女子医科大学心臓血圧研究所
pp.29-35
発行日 1969年1月20日
Published Date 1969/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204772
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I.人工弁の歴史
人工弁の研究の歴史は,心臓外科の黎明期にあたる1952年頃にさかのぼる.機能の廃絶した心臓の弁膜を,人工弁の移植によつて心機能を正常に近づけようとした.この試みはHufnagel1)のBall弁をもつて研究の門が開かれた.このBall弁は,1957年にJ. H. Stuckey, M. M. Newmann2)らによつて,plastic製のBall弁に改良され,臨床に応用されたが,この弁は左鎖骨下動脈より末梢の胸部下行大動脈に挿入し,根本的に大動脈弁閉鎖不全(A. I.と略す)を改善することよりも,A. I.の心臓に対する負担を軽減することを日的とした.1960年にHaaken3)はStainless steel caged ball valveを作つた.BallはSilicon Rubberで,ベースリングにIvalonをつけ,Coronary orificeよりも心臓側に弁を移植し,臨床例でも成功した.これは劃期的なことで大動脈弁の病変を根本的に改善させるものであった.同年にStarr4)はSilastic ballで,Cageには透明なTeflonを用い犬の僧帽弁に移植し良好な結果を得,1961年には,Cageとベースリングの縫合部分に改良を加えたBall弁を作り,臨床に応用し極めて良好な結果を得た.
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