Japanese
English
論説
血友病患者の手術—外傷性後頭蓋窩血腫により水頭症を惹起した重症血友病Aの幼児手術例を中心として
Craniotomy in a hemophiliac patient: An operated case of severe hemophilia A infant with progressive hydrocephalus due to traumatic posterior fossa hematoma
別府 俊男
1
,
荒井 康温
1
,
倉光 秀麿
1
,
佐野 鎌太郎
1
,
山口 栄豊
1
,
仙頭 茂
1
,
鈴木 睦郎
1
,
安部 英
2
Toshio BEPPU
1
,
Takeshi ABE
2
1東京女子医大外科
2東京大学医学部吉利内科
pp.1038-1050
発行日 1968年6月20日
Published Date 1968/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204632
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はじめに
近年血液凝固に関する研究が進み,凝固機序の解明にともなつて,血友病に対する病型分類,治療法も系統的に行なわれるようになつた.したがつて血友病患者の皮膚,関節内,筋肉内出血,あるいは骨折等の処置も効果的に行なわれるようになり,虫垂炎をはじめ脾摘,骨切除,四肢切断,腎摘等の大手術も容易に行なわれ死亡率も減少の一途を辿つている.しかるに,頭蓋内出血は現在血友病患者の最も多い死因であるにもかかわらず,手術的療法の報告は極めて少く,もつぱら保存的療法に頼つているため,死亡率はむしろ増加している現状である.われわれは最近,外傷により後頭蓋窩血腫を起こし,進行性脳水腫を続発した重症血友病A,1年3ヵ月の幼児に前後3回の開頭術をAHG(Anti hemophilic Globulin)濃縮蛋白液輸注によつて施行,良好な経過を辿つて一応目的を達した例を経験したので報告する.
本症例は文献上本邦最初の開頭例であり,後頭蓋窩手術の為,特に術後の管理が至難であつた.これらの点と血友病という特殊条件下での脳外科の立場より現在の治療の概略を検討したのでここに述べ諸賢の批判を仰ぎたい.
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