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特集 虫垂炎—その困難な問題点
虫垂炎と診断して,虫垂炎でなかつた場合の処置はどうすべきか
How should doctorsdo when the appendicitis is not found by the time of expected appendectomy?
飯塚 積
1
Tsumoru IIZUKA
1
1東京都済生会中央病院外科
pp.1649-1651
発行日 1966年12月20日
Published Date 1966/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204165
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はじめに
虫垂炎の自己診断で直接外科医を訪ずれる患者も少なくない現況ではあるが,虫垂炎に特有な他覚的症状もないままに,定型的な症例を除いてはその診断はなかなかむずかしい.虫垂炎の手術を数多く経験した外科医は,だれしも誤診のにがい経験をいくつか持つているにちがいない.診断学の進歩につれて最近における虫垂炎の誤診率は,どのように変つてきているだろうか.古典的文献からひもといてみると,本邦では2.2%1)ないし9.7%2)と記載され,欧米の11〜22%に比較して決して低率とはいえない.最近の誤診率の報告が見当らないので,私の医局でのカルテを調査してみた.昭和36〜40年の5年間に,虫垂炎の臨床診断の下に開腹した症例は1554例で,このうち虫垂炎でなかつたものが17例であり,1.09%の誤診率を示した.これは虫垂炎と鑑別すべき他疾患の診断法が向上したためにちがいないが,それでも誤診は避けられなかつた.虫垂炎と決定する信頼性の高い診断法がないためばかりでなく,慎重さを欠いた油断がなかつたとはいえまい.本特集のなかで私に課せられた表題も,こうした場合を考慮してのことであろう.
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