Japanese
English
論説
冷凍血液—その理論と実際
Frozen blood:theory and practice
木本 誠二
1
,
羽田野 茂
2
,
三浦 健
2
Seiji KIMOTO
1
,
Shigeru HATANO
2
,
Tsuyoshi MIURA
2
1東大医学部胸部外科
2東大医学部第2外科
pp.1347-1354
発行日 1966年10月20日
Published Date 1966/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204108
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.現在の血液保存法
採血した血液にACD液(B処方:クエン酸ソーダ1.32%,クエン酸0.48%,ブドー糖1.33%)を加えて冷蔵庫に保存する現在の輸血血液保存法では,血液は3週間しか保存できない.これは4℃という温度では,血中の酵素作用がかなり残つており,血球の老化が著しく,溶血がすすむためであつて,安全な限界を考えると,2週間を過ぎた保存血は安心して使うことができないのが実状である.すなわちACD液を用いた血液保存法は保存というよりは,むしろ腐敗を遅らせるものに過ぎない.現在抗凝固剤を改良して燐酸塩を加えたり,アデニンヌクレオチッドを加えたりする試みがあるが,これとても血球生存度は向上しても,著しい保存期間の延長を期待することはできない.現在の血液保存法ではこういつた保存期間の制約のために,保存血の需要と供給のコントロールはなかなかむつかしく,需要が少ないために期限切れの余剰の血液が大量に廃棄されることもあれば,またある時には不意の大量の需要のために著しく血液の不足することも多い.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.