読影のポイント
脳波の読み方—(7)脳腫瘍の脳波
喜多村 孝一
1
1東京大学医学部脳神経外科
pp.914-917
発行日 1966年7月20日
Published Date 1966/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204027
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脳腫瘍を構成する腫瘍細胞は神経細胞と異なり,脳波のような電気活動をもたないので,脳腫瘍そのものには脳波的電気現象はみられない,したがつて,腫瘍の中心に電極をおいた場合は電気的活動は見られないはずであり,理論的には脳波活動の零点を探せば腫傷の局在部位を突止めることができるはずである.しかしながら,臨床脳波検査において脳波電位の零点を見出し腫傷の局在部位を診断することは実際にはまず不可能である.その理由は,臨床脳波検査に用いられる頭皮上の電極が大脳表面から2〜3cm離れており,このために,この電極からは,電極直下を中心とする径2〜3cmの範囲内の脳表面の電気活動が導出されるからである.また,浸潤性の悪性腫瘍の場合,肉眼的な腫瘍組織の中には腫瘍細胞とともに神経細胞も残存し脳波活動を維持しているからである.したがつて,脳腫瘍による脳波異常としてわれわれが臨床脳波検査でみとめうるものは,腫瘍による圧迫・浸潤を原因とする神経細胞の機能障害であり,その大部分は脳瘍の周囲の脳組織の循環障害・脳浮腫によつてひきおこされたものである.広範囲にわたる悪性腫瘍でそのなかには神経細胞を見ないようなものでは,頭皮上からでも脳波活動の零点を見出すことができるが,このようなことはむしろまれである.
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