雑感
扁桃摘出手術時の一止血法
岡 三郎
1
1前:東京都交通局病院耳鼻科
pp.1113
発行日 1965年8月20日
Published Date 1965/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203719
- 有料閲覧
- 文献概要
扁桃摘出手術時の出血は,多かれ少なかれ耳鼻科医の悩みの種であつて,その止血方法はわれわれの大先輩の方々によつて種々報告され,血管結紮の器具も考案され,実用に供されている.私も勤務医の頃は,しばしば大出血に遇つて,止血に数時間を要した事もあつた.10%硝酸銀,過クロール鉄を用いたり,トロムボゲンその他の止血剤を着けた綿球で圧迫したり,止血鉗子で長時間挾んでおいたり,最後にはガーゼを手術創に入れて前後口蓋弓を縫合したりした.血管結紮も行なつたが,何の器具も使用に手数がかかつて仲々慣れる事が出来ず,ここで考えついたのが,動きの弱い部分であるから結紮した糸は1回結びでも脱落することはあるまいという事であつた.そこで結紮糸のなるべく太いのを選んで直径4センチ位の「わな」を作り,固定された方の糸の結び目から1/2ないし1センチの処を他の止血鉗子で挾み,絞断器の針金の輪を送り込むと同じ要領で血管を挾んでいる鉗子の2コの指環を越えてから「わな」を絞つて,そのまま尖端へ送り,尖端をはずれた事を確かめてから,糸を挾んだ鉗子と動く方の糸を指にまきつけて血管を絞める.普通の結紮の場合と同じ形になるが二重に結ぶ必要はないから両方の鉗子をはずして糸を結び目から1ないし2センチの処で切る.結んだ糸は4〜5日で自然に脱落することもあるが普通は5〜7日目頃に鑷子で軽く引つぱれば取れてくる.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.