Japanese
English
症例
下大静脈閉塞によるBudd-Chiari症候群を呈した1症例
A case of Budd-Chiari's syndrome caused by obstruction of inferior vena cava
斉藤 敏明
1
,
津村 整
1
,
石田 堅一
1
,
山本 一郎
2
,
勝 正孝
2
,
西山 保一
3
Toshiaki SAITO
1
1川崎市立川崎病院外科
2川崎市立川崎病院内科
3川崎市立川崎病院検査科
pp.1399-1404
発行日 1964年10月20日
Published Date 1964/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203453
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はじめに
1846年Buddが肝膿瘍による肝静脈血栓症を報告し,また1899年Chiariがこれの臨床的および病理学的検討を行なつて以来,肝静脈閉塞に起因する一連の症候群はBudd-Chiari's Syndrome,あるいはChiari's Syndromeと呼称されて,興味ある疾患として研究され,すでに欧米では150例,本邦でも数10例の報告がある1),しかしその原因ならびに病態は複雑で,今日,静脈造影法,肝Biopsy,肝カテーテル法など,本疾患にたいする診断にかなり有力なものがあるとはいえ,なお困難な点が多く,また治療上でも少数例に外科的療法が試みられたにすぎない2-4).その原因によつては明るい期待がもたれるとはいうものの,なおまだ困難な問題が多い.
われわれは最近下大静脈の完全閉塞により本症候群を呈した1例を経験したが,結果的にみて,診断の甘さから手術の選択を誤り,加えて高度の肝硬変のため,不幸な転帰をとつた.剖検上きわめて興味ある所見を見いだしたので聊検討を試みた.
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