Japanese
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特集 Budd-Chiari症候群をめぐって
Budd-Chiari症候群の病態
Clinical features of Budd-Chiari syndrome
岩橋 寛治
1
Kanji Iwahashi
1
1愛媛大学医学部第一外科
11st Department of Surgery, Ehime University School of Medicine
pp.1159-1166
発行日 1989年11月15日
Published Date 1989/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205572
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1846年,Budd1)は52歳男性で肝,脾,肺の強固な炎症性癒着があり,また,すべての肝静脈内面が肥厚し,うすいpseudomembranを伴った症例を記載した。1899年,Chiari2)は文献的に集めた7例の肝静脈主幹の閉塞性静脈炎と,3例の同様の自験例について詳しく報告した。Chiariの3例は肝静脈主幹の原発性の閉塞性静脈炎,静脈内膜炎であり,周辺から病変が波及したものでもなく,梅毒性のものであろうと推測している。Budd-Chiari症候群という名称はこの二人の報告者の名をとって名づけられたものであり,本来,肝静脈閉塞のため肝静脈血の流出が障害され,その結果生じる肝欝血,門脈圧亢進症状に対して用うべきものである。したがって本邦に多い肝欝血を伴う下大静脈閉塞に対して肝部下大静脈閉塞症と称する人も多い。しかしBudd-Chiari症候群なる名称も本来よりは広い意味で使用されている傾向にある。すなわち原因は何であれ,また肝静脈閉塞の有無にかかわらず,肝静脈血還流障害をきたせば,これによって生じる臨床症状をBudd-Chiari症候群と称していることが多い。ここでは,この症候群をこのように広義に解釈して述べる。
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