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Photographic and Radiographic Atlas of Anatomy—その考え方と試み
横地 千仭
1
1横浜市大第一解剖
pp.108-109
発行日 1964年1月20日
Published Date 1964/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203246
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戦前には解剖図譜といえば大体ドイツ物と相場がきまつていたが,戦後はわが国においても多くの図譜が出版され,中にはすぐれたものもできた.しかし同時にまた,他のものと同じようで全く個性のない本も出て来ている.すなわち以前から出ているものよりもむしろ劣つた,何でこんな本が出版されるのかと疑わざるを得ないようなものも現われ始めている.それからもう一つ気づくことは,わが国の解剖図譜は一般的に臨床方面のことをほとんど意識しないで作られているということである.このことは特に米国のと比べてみると明らかであり,おそらくドイツの伝統を引継いでいるためであろう.そして現在の肉眼解剖学は臨床と提携することなく,超然として独走しているようにみえる.もちろん解剖学者が生噛りの知識をもとに臨床解剖学図譜というようなものをかいたならば,専門の臨床家の目で見た場合には中途半端な,ピントのずれたものができ上る可能性が多分にある.現に,有名なRauberの教科書が50年以上の命脈を保つているのは,純粋に客観的な解剖の立場から書かれているためだといわれている.それならばこれらの完成された立派な本が多数出ている今日,もはや新たに解剖の本が出る必要性は全くないように見える.しかしそれにもかかわらず何が物足りない感じがするのは何故であろうか.
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