Japanese
English
特集 癌の進展
論説
外科医のみた癌の進展
Surgical Aspects of Cancer Development
久留 勝
1
,
渡辺 弘
1
Masaru KURU
1
1国立がんセンター外科
pp.1333-1339
発行日 1963年11月20日
Published Date 1963/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203192
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Ⅰ.根治手術と癌の進展
癌の治療には外科的療法,放射線療法,および化学療法等があるが,今日においてもなお癌根治療法の第一をなすものは外科的手術であろう.外科的手術はいうまでもなく根治を目標とするが,いわゆる根治手術では,原発巣は勿論,連続的たると非連続的たるとを問わず癌細胞巣をねこそぎ除去しようと努力する.さて実際上真の意味の根治手術のできる場合は必ずしも多くない.いろいろな全身的また局所的の条件が根治手術の施行を妨げるからである.手術の障害をなすものとして,全身状態,年令,他疾患の合併(ことに心臓,肝臓,腎臓など)等もあげ得るが‘何といつても根治を妨げる最大のものは,転移の存在である.周知の如くリンパ節転移の中には肉眼的に識別困難なものも存在する.手術範囲を拡大して,転移癌細胞の存在を疑わせる組織を,徹底的に廓清する,いわゆる拡大根治手術の提唱される理由がある.しかしながらこのような努力にもかかわらず,なお多くの領域で満足な治療成績が挙げられていないのが,癌治療の現状である.
試みに主な癌疾患の手術成績を表示すると,表(1〜3)のごとくで,5年生存率は乳癌では30〜70%,直腸癌では30〜60%,胃癌では13〜40%となつているが,手術できる比率を考慮に入れるとき胃癌の治療成績は表のごとき数字より遙かに下まわるものと思われる.
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