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医学会総会にみた医療制度問題
織畑 秀夫
1
1東京女子医科大学
pp.1088
発行日 1963年8月20日
Published Date 1963/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203144
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去る4月の医学会総会には医療制度に関するシンポジウム「医療制度の将来像」および夜間の公開討論会「国民医療の伸展」など,現行社会保険医療制度によつて歪められた日本の医療を如何に救うかに論議が集中された.それに関しての私見を述べたい.
現行社会保険医療制度には制限という点で,医師の医療施行の自由(これは個々の医師に医療を行なう主体があつて,その医学上の良識にしたがつて医療を行なう権利と責任があることを意味する)が奪われているという最大の欠点がある.この制限の除去が最も大きな目標であつて,この制限がある限り医学会も存在の価値を失なうといつても過言ではない.その点の討議が不十分なことが日本の臨床医学の弱点であり,同時に日本の従来の臨床医学教育の欠陥を曝露している.すなわち医療を制限して病人が苦しむことがあつても,社会保険医療担当規則に従えばよいと考えて,大して胸に苦痛を感じない医師が多いこと,それをまた一般社会が平然と支持しているところに不思議な問題がある.極言すれば過去数100年間,自分を大切にすることを忘れ,人命を軽視することを第1に教育されていた日本の慣習にその源を求めることができる.
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