Japanese
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特集 神経症の日本的特性
昭和38年精神病理懇話会より
「対人恐怖」をめぐつて
On the Problem of Anthrophobia (Tailin Kyofu) in Japan
加藤 正明
1
M. Kato
1
1国立精神衛生研究所
1National Institute of Mental Health
pp.107-112
発行日 1964年2月15日
Published Date 1964/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200670
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I.まえがき
本日のシンポジアムは,神経症の日本的特性についてであるが,およそ日本的特性といえるものがあつたとしても,それは根元的に民族的特性とか,風土的特性などではなくて,日本における社会的,経済的発展ないしは制約のもとにおける対人関係のありかたが,神経症患者の対医師,対社会における対人関係を,規定しているものと考える。
従来,欧米の学者が文化人類学や比較精神病理学の立場で,日本人の精神病理の特性としてあげてきたものの多くは,現代日本に残存する「前近代生」の指摘にすぎず,かつて「伝統志向的」だつた日本社会の遺残現象にすぎないといえる。現実の日本は急激に「大衆社会」として変貌しつつあり,むしろこのような急激な変化における混然とした精神状況こそが「日本的」特性となつているのである。この意味で私はいわゆる「文化主義的な立場」に対して批判的であり,それは「文化」の根底に存在する下部構造を無視ないしは軽視する立場であると考える。
このように日本的特性をいかにとらえるかに問題があり,それにはまずその裏づけとなる歴史観や社会構造の発展法則に関する見解が根底になければならないであろうが,ここでは一応神経症の問題にかぎつて考察する。
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