Japanese
English
展望
膵癌をめぐつて—Ⅱ.癌と糖尿型糖代謝
On cancer of the pancreas. Ⅱ. Relation of the pancreatic carcinoma to diabetes mellitus
渋沢 喜守雄
Kishuo SHIBUSAWA
pp.1087-1098
発行日 1962年10月20日
Published Date 1962/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202987
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はしがき
癌患者に過血糖の高頻度に見出されることは,すでに古くから注目され,こんにちさらに一層の注意を惹いているように思われる.この方面の最初の報告は,筆者末見であるが,Freund(1885)であつて,彼の70癌患者には,62例の過血糖が見出されたという.ついで,Tuffier(1888)は癌と糖尿との合併の稀ならぬことを肯定し,このさい糖尿がすべての癌症状より先行するとしているのであつた.また,Trinkler(1890)は癌患者血清に還元物質,ことにブドウ糖の濃度が正常以上に高いことを確かめたが,皮膚その他の癌より消化器の癌において,とくにこの所見が著しいと見ていた.当時は糖耐容試験法が臨床に応用されていなかつた.したがつて,癌患者の糖代謝位相が,糖尿病型であるか否か確実ではなかつた.筆者(1962)は別の機会に,糖尿病患者の癌合併頻度を展望したが,癌患者の30〜80%という高頻度に,糖尿型糖代謝異常を見るという報告が多い.これは甚だしく高い頻度といわなくてはならない.そして,こうした糖代謝異常は,癌のすべての臨床症状の最初の発現より,はるかに先に前駆することが少なくない(60%)ようであつた.すべての癌のうち,膵癌と子宮内膜癌とにおいて,この2点がとくに明瞭である.すなわち,糖尿病あるいは糖尿型糖代謝異常の患者から,膵癌または子宮内膜癌が好発するという結論がえられたのであつた.
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