Japanese
English
綜説
術後急性肺水腫に関する臨床的ならびに実験的考察
Clinical and experimental studies on the postoperative acute pulmonary edema
千葉 智世
1
,
林 久恵
1
,
大沢 幹夫
1
,
田中 孝
1
,
清水 寿子
1
,
岩本 淳子
1
,
橋本 明政
1
Tomoyo CHIBA
1
1東京女子医大榊原外科
pp.323-332
発行日 1960年4月20日
Published Date 1960/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202578
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
緒言
急性肺水腫は胸部外科に合併する重篤な疾患である.一旦発症すれば忽ち高度の換気障害を惹起し,これに原因した急性アノキシアはさらに悪循環を形成し,遂には不良の転帰をとるものが多く,非常に恐れられている.石川氏の統計によれば肺癌を含む慢性肺疾患手術に最も多く次いで心臓手術等に多いとされている1).従つて多くの人人がこの病態生理の追求に多くの実験をこころみ,その原因としていろいろな条件をあげて来たが未だ統一されない状態である.われわれは数年来,実験的研究をつづけ肺水腫の直接の原因は肺動脈圧の亢進にあるという結論を得た.事実,上にのべた多くの条件が肺動脈昇圧作用を有し,これが共通の作用機序をなすと考えられる.すなわち肺剔除それ自身一過性ではあるが肺動脈圧亢進を招き,アノキシア,輸血等は勿論,中枢神経障害時,あるいは心疾患中殊に本症と関連深い僧帽弁狭窄症でも肺動脈圧の亢進をみとめるのである.われわれは今迄とりあげられて来た諸誘因は結局は肺動脈圧上昇という一機転に統一され,これが滲出を招く最大の因子と考えるのである.ここに現在迄行つて来た実験の概要を述べ,あわせて臨床例として仮に心臓手術例のみをとり上げて肺動脈圧の変化を中心に考察したいと思う.
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.