Japanese
English
綜説
直視下心臓内手術の手段としての選択的脳灌流冷却並びに冠動脈灌流法
Selective Brain Cooling by Irrigation Combined with Arterial Coronary Perfusion as an Adjumct for Open Heart Surgery under Direct Vision
木本 誠二
1
,
杉江 三郞
1
,
三技 正裕
1
,
浅野 献一
1
,
吉村 享
1
,
佐藤 文雄
1
Seiji KIMOTO
1
,
Saburô SUGIE
1
,
Masahiro SAIGUSA
1
,
Ken'ichi ASANO
1
,
Tôru YOSHIMURA
1
,
Fumio SATO
1
1東京大学木本外科
1Surgical Department, Tokyo University School of Medicine
pp.319-324
発行日 1956年5月20日
Published Date 1956/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201804
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
直視下心臓内手術に関して,吾々が年来研究を続行していることは既に度々報告した所であり,その結果特に浅野の実験的研究が実を結んで選択的脳灌流冷却法の創案となり,臨床的実施に移した成績も従来の方法に比較して優秀であつて,更に研究を推進する価値のある一法であることは昨年春の日本医学会総会特別講演1)に於て発表し,又本誌上にも報告2)した通りである.その後特に本法による心房中隔欠損症6例の手術成績3),及び心室中隔欠損1例の手術成績4)を報告し,何れも死亡例なく,臨床的治癒の状況に持来すことが出来た.
しかし本法にも臨床的実施には一定の制約があり,更にその適応を拡大すべく研究を続行した.昨年秋の日本胸部外科学会に於て,選択的脳灌流冷卸法に関して多数研究者の追試発表があり,概ねその卓越した効果は承認されたのであるが,吾々としてはむしろその不利な面,と言うか,その適応の限界について反省すべき点を卒直に報告5)し,冠動脈の動脈血灌流の併用を述べた.その後この方法を本格的に研究して臨床的実施に移し,これは単なる選択的脳灌流冷却法と人工心肺による長時間心臓開放との中間を行く一つの方法であることを確認し,以前からの吾々の念願であるFal—lot氏四徴症の根治手術を企図して,技術的に一応完了し得た.取敢えず本年1月の外科集談会で報告6)したのであるが,なおその後の経験も加えて本稿を記述し,大方の御批判を頂き度いと思う.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.