Japanese
English
特集 偶發症との救急處置
腰椎麻酔ショック予防策としての輸液方法の工夫及び輸液と血管剤との比較検討
A. Device of the Transfusion Method as the Prophylactic of Spinal Anesthesia Shock, and the Comparison Between Transfusion and Vasopressor Drug.
田中 正美
1
,
渡辺 昭一
1
,
鎌田 四郞
1
,
楊 大鵬
1
Masao TANAAKA
1
1大阪市立医大沢田外科
1Depertment of Surgery, Osaka City Medical School.
pp.749-754
発行日 1955年11月20日
Published Date 1955/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201699
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
腰椎麻酔に伴う副作用として低血圧と呼吸筋麻痺のある事は一般に知られているが,この両者は相互に密接な関係にあつて,臨床的観察でこれを厳密に区別する事は困難である.
即ち著しい呼吸筋麻痺を伴う様な広範囲麻酔では当然殆んど全身の小血管の弛緩を惹起し,必然的に血液の偏在--心搏出量の低下--低血圧を起す.そしてこの際呼吸運動の障碍は血液の心還流を阻碍して一層この結果を助長するであろう.一方著しい呼吸筋麻痺を起さない程度の麻酔範囲であつても,その患者の抵抗力と云うか,血液量並びにその性状,及び循環系全般の予備力の弱い様な場合には,急激な血管麻痺即ち低血圧,次いで呼吸中枢の貧血,低酸素症に伴う抑圧から呼吸停止へと移行する.しかも脳がAnoxiaに耐えて活動を続け得る期間は経験上3〜5分と云う極めて短時間であるため,臨床上の対策を講ずる上にそれが呼吸麻痺によるか,低血圧によるかを突差の場合に判断することは実際上意味がない.即ちその原因が低血圧によるものであつても,未だかすかに心搏動を続けているに拘らず既に完全に呼吸を止めている場合があるであろうし,又呼吸筋麻痺が極めて高度の場合でも呼吸はかすかに腹式に行つているのに撓骨動脈搏は全くふれないと云う状態も起り得る.心臓の自動性を考慮すると何れの場合でも循環系の抵抗が呼吸系に比してより強いであろう事は推定に難くない.
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.