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「戰爭は文明の母」と云う諺がある. 嫌な言葉ではあるが,義肢に関しては,確に戰爭毎に大進歩がもたらされた. 17世紀迄は義肢は手製か,又は人形師や鍛冶屋等が作つた位のものだが,17世紀頃より機械交明も勃興し,又累次の戰爭で四肢切断者も数多く出たので,機械学的に組織立つた形態を採る様になつた. 第一次世界大戰後は,何十万と云う四肢切断者の爲に,優秀な義肢が研究,支給され,一方身体障害者の更生の爲にドイツ,フランス,イタリー等では身体障害者強制雇傭法により,英米では博愛的精紳運動により,その就業促進を図り. 政府も,関係者も,身体障害者自身も,今度こそ再起更生疑なしと信じたが,この期待は残念乍らむしろ裏切られた感が深い. 今次戰爭により再び数多の身体障害者を出した今日,我々は前回の成績の惡かつた原因を深刻に檢討する要がある. 私の考えでは,身体障害者の雇傭に際し民間企業に犠牲を強いることは,法律を以てしても博愛心を以てしても,永続きしないことゝ,義肢・装具のみを以て足らざる機能を補うには,どうしても一定の限界がある爲と思う.
今次大戰後,米國に於て義肢が大進歩したようであるが,その構造自身とすれば,むしろ前大戰後のものより簡單化されている.米國の身佑障害者対策の進歩は,むしろ身体障害者に対する更生指導(Rehabilitation)と,職業斡旋の組織的発達にあり,その一環として優秀なる義肢を支給,訓練した結果にょるもので,極度に機械化された米國に於てさえ,義肢を以て身体の欠けたる機能を補う爲の唯一のものとはせす,先づ身体障害者の働き易い環境を作り,その一部として義肢を考案支給している態度は,我々も充分注目する要がある.またこのことは決して義肢装具を軽視することにはならない.
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