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骨折は不幸なる災害であり文化の進むに伴つて減少せず,反対に増加するとも考えられ,その治療は医学界に於ける重要なる問題である. 事実,骨折の研究は古くより詳細に研究せられているが,其の研究方法は細胞学的研究,物理学的研究更に化学的研究へと進歩し,その骨折治癒の本態把握の爲,努力がなされたのである. 私達は骨折と特に密接な関係のあると思われる骨折血腫の問題を取上げ過去の業績を紹介し,私達の最近の研究の一部を報告したい.
さて,骨折血腫の問題を取上げる前に,一般の血腫とはどんなものかを簡單に述べて見ると,一般に血腫とは血液が血管外に出て,一つの空洞内に集積した状態を云うのであるが,通常この血腫は小なる場合は吸收されるが,大なるものは吸收が不完全であつて,内部の血液は凝固し,その周囲に結締織被膜を形成して,組織化され,更に石灰沈着を来す事があり,而してその内容は淋巴液の混入等の多い時には凝固が不十分なるものであつて,その性状は初めは血性であるが,次第に淡くなつて後には漿液性となつて来るもので,此の様な血腫は一般には創の治癒を妨害し,又化膿の良き培地として,外科医の嫌惡する処であるが,この様な一般血腫に対して,特に骨折時に見られる骨折血腫がある. これは骨折と同時に骨及び骨膜特に骨髄血管が損傷を受ける結果,又骨折部隣接血管が時に損傷を伴うために,骨折部には著明なる出血が起つて,そこに形成される血腫を云うのである.この骨折血腫は骨片間,剥離した骨膜の下層,骨と筋肉の間に潴溜し,骨髄,骨膜及び隣接組織は通常この血液に侵されているのである.この様に骨折部と密接なる関係を有する骨折血腫が,骨折治癒に何等かの影響を有するであろうという問題は誰しも考えるところであつて,この血腫について多くの人々が,種々なる実驗研究及び経驗に基いて種々なる発表をなしているのであるが,その重要性を説くものもあり,又,有害説を主張する者もある.
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