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膵臟疾患の外科的手術として,從来その対象となつたものは膵臟膿瘍,膵臟嚢腫. 急性膵臟壊疽時としては膵臟結石であつて,慢性間質性膵臟炎,膵臟癌に至つては,殆ど外科医がこれに直接手を着けることは稀れであつた. ただ膵臟内ランゲルハンス氏島のインシュリン過剰分泌或はラ氏島の腫瘍による特発性低血糖症を発生した場合にその腫瘍の剔出或は膵臟尾部の部分的切除が行はれることは,1929年にHowland氏等によつて最初の治驗が報告されて以来施されているのである。それはラ氏島の腺腫の80%が尾部乃至体部に〓〓する故,そのために,膵臟の部分的切除が企てちれ且つ成功したのである. しかし最近,種々の原因を理由として膵臟の頭部及び十二指腸の切除或は膵臟及び十二指腸の全剔出の手術が実施され,その術式の改善,手術の前後処置,適應症の檢討も進められ,更にその手術の結果が,人体の新陳代謝及び消化機能に及ぼす影響等に就ても多大の興味を以て臨床方面ばかりでなく,人体生理学の根本問題からも研究されておるのである.
この種の手衛が最初に患者に施されて成功したのは,1935年にWhipple氏1)たちが十二指腸のVater氏乳頭の癌に対する外科的根冶手術として行つたときである.次でBrunschwig氏が1937年に膵臓頭部の癌腫に対して初めてこの手術を施して成功した.これ等の場合その手術は何れも2段階の手術として行われ,先づ最初の準備手術として,胆道を十二指腸以外の胃或は空腸に開通せしめること,胃腸吻合,同時に患部の乳頭部或は膵臓並に周囲の状態を檢査することであつた.次で第2段の手術として,十二指腸及び膵臓頭部の切除或は十二指腸及び膵臓奈部を剔出するのである.しかし現在ではそれ等の手術は,術式及び術前術後の処置などの改善並に後述の他の理由から一次的に根冶手術として施すことが專ら行われて,2段階に施すことは漸次廃たれるような傾向にある.
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