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皮膚黒色肉腫に就て
藤田 承吉
1
1東京慈惠會醫科大學外科學教室
pp.480-483
発行日 1948年12月20日
Published Date 1948/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200396
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緒言
黒色肉腫は黒色素形成機能あるChromatopho—renの異型的増殖による惡性腫瘍で,その病理解剖學的並に臨牀的特異の所見に基き腫瘍中特殊の地位を占めるものである。而してその構造及び發生機轉に關しては現今尚不明の點等が多い。本疾患は既に遠く希臘の醫聖Hippokratesによつて記載せられ,羅馬の醫Celsusは本症にNigri—cansなる名稱を附したが,これに就いて詳細に發表したのはLaennecを以て嚆矢とする。以來Borst,Dieterich,Eiselt,Luther,Ribbert及びその他多くの人によつて報告されているが,本邦に於いても大塚氏は眼球の脈絡膜に原發した32例を,砂田氏は鼻科領域に於ける15例を,光吉氏は耳鼻咽喉部に於ける21例(内外文獻138例中)を報じ,皮膚より發生した黒色肉腫に就いては川西氏は18例を,天野氏は25例を蒐集報告している。然し是等原發部位を異にした黒色肉腫に就いて,綜括的に觀察したものはまだ見當らない。
著者は當教室に於いて,足蹠趾間の皮膚に原發し領域淋巴腺並に全身性轉移を來した黒色肉腫を經驗したので之を報告し,併せて本邦文獻を渉獵蒐集した皮膚黒色肉腫55例及び之に眼球,耳鼻咽喉科領域その他の部位に原發せる黒色肉腫を加へた188例について統計的觀察を試みて諸賢の御參考に供する。
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