臨牀例
乳兒幽門狹窄症の1治驗例
相澤 八郞
1
1千葉醫科大學第一外科教室
pp.57-63
発行日 1947年2月10日
Published Date 1947/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200189
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1. 緒言
乳兒の幽門狹窄症は1717年Blairの最初の報告以來歐米に於ては相當多數の報告が見らるるも本邦に於ては割合に少なく,特に外科的治療を要するが如き重症は比較的稀の樣である。本症は其の原因を幽門筋の肥厚の如き器質的障碍に因るものと,幽門筋の痙攣の如き機能的障碍に因るものとに大別せられ,此の中器質的障碍に因るものが外科的治療の對象となるものである。
本症の治療は小兒科的に行ふ可きか,又は外科的に行ふ可きかは議論の有るところであるが,兩治療法の比較檢討報告者の多くは漸次外科的療法の優秀確實性を認めつつある樣である。本邦に於ては其の重症例の少き爲か專ら小兒科的療法によるもの多く,本邦にて外科的療法を施行せるは昭和9年坂内氏の例を嚆矢とし爾後20數例の報告を見るに過ぎず,而かも其の治驗例は僅かに10例である。最近我教室に於て定型的の乳兒幽門狹窄症にて小兒科的治療では治らなかつた一重症例に外科的手術を行つて全治せる一経驗例を得たので之を報告し,併せて聊か本症の外科的治療に就て述べてみたいと思ふ。
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