特集 早期胃癌の外科治療を極める—「EMR 適応外」への安全で有益な縮小手術を求めて
扉
小寺 泰弘
1
1名古屋大学消化器外科学
pp.1429
発行日 2014年12月20日
Published Date 2014/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200136
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早期胃癌の手術術式は,その診断が容易ではなかった時代に,せっかく早期に診断され本来であれば治るべき患者さんを一例たりとも失ってはならないとの強い信念と倫理観のもとに確立されたものである.したがって,切除範囲や郭清範囲の上でのsafety marginは極めて大きい.しかし,今や早期胃癌の一部においてはEMR/ESDが標準治療である.そして,惜しくもEMR/ESDの適応からはずれた場合,次に標準治療として提示されるのはリンパ節郭清を伴う系統的な胃切除術である.大いに落胆する患者がみられるのも無理はない.一方,高齢者が増加しつつある現状を鑑みると,上部の胃癌にも常に系統的胃切除を行うのが本当に良いことなのかどうか疑問に感じられることもある.このような場合の選択肢はないものだろうか.しかし,何らかの縮小手術を提案するのであれば,病変の過小評価を避ける必要があり,現段階での術前診断の限界を知っておきたい.また,早期胃癌の手術の多くが完全内視鏡下で行われつつある現状では,確実な切除ラインあるいは切除範囲の決定のためにもそれなりの工夫が必要である.さらに言えば,噴門側胃切除術の胃全摘術に対する,あるいは幽門保存胃切除術の幽門側胃切除術に対する明らかな優越性についても,必ずしも示されていない.こうした縮小手術のコツをつかみ,なるべく患者の利益につなげる必要もある.今や早期胃癌の治療に求められている質は「治ればよい」という域を確実に超えており,その治療は実はなかなか難物であるともいえる.
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