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はじめに
昨今,サルベージ手術あるいはコンバージョン手術といった言葉を聞く機会が増えたように感じているのは筆者だけではあるまい.特に癌診療においては最近の出来事のように思う.おそらく読者である先生方におかれても,それぞれの考え(イメージ)をお持ちと思うが,それらを整理して考え直すために本特集は企画された.
医学用語としてのサルベージあるいはコンバージョンの定義に類する明確なものはなさそうである.日本医学会医学用語管理委員会編集「医学用語辞典」(第3版,2007年,南山堂)では「salvage operation:救済手術」とだけ記載されており,コンバージョンに至っては記述そのものがない.Medical dictionary(英)においても同様である.しかしながら,salvageやconversionの単語それ自体の意味を考えると,それぞれの意味は理解しやすい.salvageは「救い出す」ことであり,conversionは「変更する」ことである.
サルベージ手術とは,癌を根治する目的で行った放射線あるいは薬物療法などのあとに,病巣が消失しなかったり,いったん消失したものの再燃したりした場合にR0切除を目的として行う外科治療と一般的には考えられている.日本語では救済手術と記載されているように,「最後の一手」の意味合いがある.外科以外の治療法がない場合の手術を指している.
一方,コンバージョン手術とは,薬物療法から外科的切除へといった治療方法の変更に伴う手術と考えられる.そのような場合には,外科手術後に再び薬物療法を行う例も少なくないものと考えられるので,確かに「一時的」治療法の変更(コンバージョン)のほうが適切な用語と考えられる.放射線療法は限りがあるので(追加照射はない),せっかく奏効しても,そのあと放射線は使えない.根治的放射線化学療法後の外科手術は,ほかに根治的治療法がない時点の治療になるわけで,まさしく救済(サルベージ)の言葉がふさわしいと考える.
しかしながら,切除不能であった病変が外科以外の治療法によりdown stagingすることができ,その時点で切除以外では根治が望めない場合などは,いずれの言葉もあてはまるものと思われる.重要なことは放射線や薬物療法などの外科以外の治療法の進歩,普及に伴い,固形悪性腫瘍に対して様々な治療法が導入され,日常診療に活かされていることである.それらをどのように組み合わせて行うかが最も大切なことであり,それぞれの治療法は専門的知識を必要とするかもしれないが,現場で癌診療を担っている外科医も知っておくべき事柄であると考える.そのことが間違いなく患者さんにも恩恵をもたらすものと考える.
もともと切除できなかった病変が切除できるようになりR0切除ができた.これが「サルベージ」であれ「コンバージョン」であれ,最善,最良の手術の役割である.もともとは切除可能であったが,術式を変更できるくらいに(縮小あるいはQOL向上)奏効したあとに行う手術,これも重要である.いずれにしても,手術だけではなく,ほかの治療法を組み合わせる(集学的治療)ことによって,患者さんにメリットが発生することが肝要なことであり,本特集はそのことを広く理解していただくための特集でもある.個別臓器に関しては各論を参照していただきたい.本稿では,日常診療において,癌患者を診療するに際しての考え方を述べる.まず,そのポイントを列挙する(表1).
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