1200字通信・63
二つの命―「生んでくれてありがとう」余話
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.337
発行日 2014年3月20日
Published Date 2014/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104997
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- 文献概要
前号で,30歳代女性のスキルス胃癌の経験談をご紹介しました.実は,あの出来事は数年前のことだったのですが,最近になって,今度はご主人が入院することになりました.
心窩部痛とコーヒー残渣様の嘔吐を主訴に来院され,緊急内視鏡検査で出血性胃潰瘍と診断されたのでした.来院当初,迂闊にも,どこかでお会いした方だがと思いながらも,事の重大さに処置のことばかりを考えて,先に亡くなられた奥様のことを思い出せないでいたのでした.それでも入院後,こちらも少し落ち着くと当時のことが思い出され,さすがに奥様のことを口にはできず,「お子様は大きくなられたのでしょうね」と声をかけることになりました.「お陰様で,二人とも中学生になりました」とのご返事.奥様の話題には触れずじまいでしたが,お互いに彼女のことを心に浮かべあったことでした.
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