FOCUS
微細解剖ならびに剝離層にこだわった腹腔鏡下直腸癌手術
絹笠 祐介
1
,
塩見 明生
1
,
山口 智弘
1
,
富岡 寛行
1
,
賀川 弘康
1
,
山川 雄士
1
,
佐藤 純人
1
Yusuke KINUGASA
1
1静岡県立静岡がんセンター大腸外科
pp.1464-1469
発行日 2013年12月20日
Published Date 2013/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104875
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はじめに
直腸癌手術においては,根治性を担保しつつ,肛門温存および泌尿生殖器機能温存をはかる手術手技が要求される.誤った解剖の理解は術中・術後の合併症を増加させるだけでなく,癌の根治性を損なう恐れがある.正しい解剖の理解とともに,癌の進展・進行度により適切な剝離層を選択し,根治性を保持する必要がある.
これまでの直腸癌手術において,術後泌尿生殖器機能障害は外科医が想像している以上に高頻度に出現していることを理解しておかなくてはならない.直腸癌の臨床試験で有名なDutch Trialでは,実に7割以上の症例で術後の勃起障害や射精障害が生じている.わが国で行われているJCOG0212での術後性機能障害もこれに近い頻度で障害を認めている.
腹腔鏡による拡大視効果によって,骨盤深部までの良好な視野を共有する手術が可能となった.腹腔鏡下という特殊な環境において術野の展開や解剖に沿った剝離を諦めるのではなく,骨盤内という狭いスペースでは,多くの場面で開腹手術と同等,もしくはそれ以上の剝離・授動ができることを十分理解する必要がある.そのために解剖を熟知し,技術を磨き,決して妥協をしない手術を心掛けることが重要だと感じている.
本稿では,直腸周囲の筋膜構成と,それに則った剝離層で行う腹腔鏡下低位前方切除術の手技について解説する.
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