特集 外科医のための最新癌薬物療法
Ⅰ章 臓器別薬物療法
9.膵癌―③進行・再発(切除不能を含む)治療
山口 智宏
1
,
上野 秀樹
1
,
奥坂 拓志
1
Tomohiro YAMAGUCHI
1
1国立がん研究センター中央病院肝胆膵腫瘍科
pp.225-230
発行日 2011年10月22日
Published Date 2011/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103809
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レジメン選択のアルゴリズム
進行・再発膵臓癌に対する治療のアルゴリズム(図1)
進行・再発膵臓癌に対する化学療法は,1997年にBurrisら1)が5-FUに対するゲムシタビンの優越性を報告して以来,ゲムシタビン療法が標準治療として位置付けられてきていた.また,わが国ではS-1の第Ⅱ相試験で一定の抗腫瘍効果が報告されており,保険適用である.以上より,わが国では1次治療では世界的標準治療であるゲムシタビン療法を,2次治療ではS-1療法を使用することが一般的であるとされている.
2005年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)では,ゲムシタビンとエルロチニブの併用療法がゲムシタビン単剤と比較して死亡の相対リスクを18%減少させた(p=0.038)ことが報告された.生存期間中央値は,ゲムシタビン群が5.9か月,併用群は6.2か月であった2).統計学的に有意差を認めたものの,下痢や皮疹,間質性肺炎などの有害事象の頻度が併用群で高い傾向であった.副作用に見合う延命効果が臨床的に不十分であるという意見も多く,ゲムシタビン療法に置き換わる治療とは位置付けられていない.米国では膵癌に対してゲムシタビン+エルロチニブ療法が認可され1つの選択肢となっているが,わが国ではエルロチニブは現在のところ保険適用外である(注:2011年6月,わが国でも保険承認となった).
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