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レジメン選択のアルゴリズム
この20年で大腸癌に対する化学療法は大きく進歩した.1980年代までは,大腸癌に効果があるとされていた抗癌剤は5-FUのみであり,いかにその効果をあげるかに努力が注がれてきた.1980年代以降,5-FUの投与法としてロイコボリンの併用によるbiochemical modulationや持続静注法1~3)が開発された.わが国では欧米に遅れて1999年にやっとl-ロイコボリンであるレボホリナートカルシウムが承認され,大腸癌の化学療法は新しい時代に入った.しかし,そのとき認可されたレジメンは5-FUの急速静注にロイコボリンを加えたRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1)レジメンのみであった.1997年,de Gramontら3)により5-FUの持続静注療法の有用性が示され,特に欧州を中心に5-FUの持続静注療法のレジメンが好んで用いられるようになった.5-FUの持続静注療法レジメンに新規抗癌剤といわれているイリノテカンやオキサリプラチンを組み合わせたレジメンが,近年の大腸癌化学療法の中心を担っているFOLFIRI療法,FOLFOX療法である.イリノテカンもオキサリプラチンもわが国で開発された薬剤である.しかし,イリノテカンは1994年にわが国で世界に先んじて大腸癌治療薬として単剤での使用が承認されたが,ほとんど用いられることはなく,オキサリプラチンは承認すらされなかった.2000年に入り,欧米ではFOLFIRI療法,FOLFOX療法の有用性が示されていたが,わが国では使用することができず,2005年に5-FUの持続静注療法,オキサリプラチンが承認されたことで,やっとFOLFIRI療法,FOLFOX療法が使用できるようになった.その後,わが国では分子標的薬であるベバシズマブが2007年に,セツキシマブが2008年に,パニツムマブが2010年に承認され,欧米で大腸癌化学療法に用いられているレジメンのほとんどが使えるようになった.それと同時にレジメンの選択肢が多様化し,より複雑化している.
大腸癌研究会ではわが国の大腸癌治療の標準化を目的に,大腸癌治療ガイドラインを2005年4)に発刊し,その後,時代の変化に合わせて改訂している.そのなかの化学療法の項目には,切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法の3次治療までのアルゴリズムが示されており,改訂のたびに加筆修正されている.最新版5)は2010年に改訂されており,現在わが国の実臨床では,ここに記載されているアルゴリズム(図1)を参考にして治療が行われている.
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