書評
中村恭一(著)「大腸癌の構造(第2版)」
平山 廉三
1
1元埼玉医大・消化器外科学
pp.956
発行日 2011年7月20日
Published Date 2011/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103643
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初版から20年余を経ての大改訂のもと,「大腸癌の構造第2版」が上梓された.
著者の中村は常に,「腫瘍発生の基本概念」を公理として要請し,研究の出発点とする.「細胞分裂の際の突然変異細胞が排除されずに増殖するとき癌巣が形成される.よって,細胞分裂のあるすべての所に癌が出現.胃癌,大腸癌では正常粘膜からのいわゆる‘de novo癌’が大部分.良性限局性病変からの胃癌や腺腫由来の大腸癌もあるが少ない.胃癌については‘de novo癌’と良性限局性病変との比率,大腸癌では‘de novo癌’と腺腫由来の癌との比率こそが重要」.単純・明解である.40年前,わが国の癌の大御所・超大家たちはこぞって「胃潰瘍,胃ポリープ,胃炎などを胃癌の前癌状態」と決めつけて胃切除をしまくった.中村は先の公理の演繹から「胃癌の大部分は‘いわゆる正常粘膜’から生じ,胃潰瘍などとは無関係」なる事実を証明し,‘前癌状態’なる超大家たちの迷妄を完膚なく否定して葬り去った経歴をもつ.
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