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中村耕三(著)『実践! ロコモティブシンドローム』(第2版)
秋下 雅弘
1
1東京大学大学院医学系研究科 加齢医学(老年病学)
pp.604
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103269
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65歳以上の高齢者が総人口に占める割合(高齢化率)は25%に達し,今後は都市部で高齢化が著しい.しかし,超高齢社会の抱える真の問題は高齢化率ではなく,75歳以上の後期高齢者の増加にこそある.なぜならば,疾患を抱えつつも多くは元気に過ごす前期高齢者と違い,後期高齢者の障害保有率30%は今後数十年の医学・医療の進歩ではさほど減らないと見込まれるからである.このような超高齢社会を迎えつつある我が国では,“直す”医療から“直し,支える”医療へのパラダイムシフトが必要とされている.特に,要介護予備群であるフレイル(frail)な高齢者に対して適切な治療やケアを施すことで機能を改善し,自立維持を図ることがその根幹である.そのフレイルを代表する病態がロコモティブシンドローム(ロコモ)である.
さて,本書はロコモを提唱した著者が,高齢者に関わるすべての人たち,特にリハビリテーションスタッフやケアスタッフに向けて,ロコモの概念から実践的なチェック法やトレーニングまでを実にわかりやすく解説した書籍の改訂版である.ロコモは早期発見,早期介入が何よりも大切であるが,従来の「ロコチェック」と「ロコトレ」に加えて,運動器の状態を自己点検できる「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」と予防・改善のための「ロコトレ・プラス」をイラスト付きで紹介し,一歩進んだ内容となっている.実践法だけでなく,ロコモの病態論やロコモを取り巻く医学用語がCLIP-BOARDというコラムでわかりやすく解説してあるので,ロコモを理解するための入門書としても十分役立つ内容である.
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