昨日の患者
いつまでも元気で仲良くね
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.149
発行日 2010年1月20日
Published Date 2010/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102950
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遺言状とは死後のことを書き残した文書であり,多くの場合は財産の分与が記載されていることが多い.しかし,残された家族の幸せを願い,文章をしたためる人もいる.
90歳を超えたばかりのSさんが癌の再発で入院した.補液によって一時的ながら全身状態は改善し,鎮痛剤により疼痛も消失した.Sさんは,脚が冷えると言っては奥さんが編んだ靴下を履いた.奥さんや娘さん達が見舞うと「赤とんぼ」「めだかの学校」「夕日」などの童謡を歌い,死を目前にしているとは思えないほど明るく振る舞った.また,孫に電気かみそりで髭を剃ってもらっては男前を発揮し,目薬をつけてもらっては涙を隠した.
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