昨日の患者
羅生門
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1427
発行日 2009年10月20日
Published Date 2009/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102730
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- 文献概要
古今東西,真実は1つであるが,人はそれぞれ自分なりの解釈で自己の行為を肯定する.芥川龍之介に「羅生門」という作品がある.1人の侍が殺害された事件を,殺害された侍,殺害した盗賊,侍の妻,目撃者がそれぞれの立場で自己の行為を肯定して証言する.
80歳代半ばのS先生は,かつて医学部教授を務めた恩師である.ある日突然,奥様から電話がかかってきた.「夫が急に左半身に力が入らなくなったのですが,どうしたらよいでしょう」.電話では詳細がわからないため,まずは病院に来ていただいた.S先生の症状から頭部疾患が疑われたため,頭部CT検査を施行した.すると,外傷などの既往はなかったが,右慢性硬膜下血腫であった.当院には脳外科がないため,同級生が院長を務める脳疾患専門病院に治療を依頼した.S先生の教え子でもある同級生は快諾し,即転院手続きが行われた.そして転院の直後に緊急ドレナージ手術が行われた.術後の経過は良好で,手術の翌日から経口摂取や歩行が可能となった.そして術後2日目にはドレナージチューブを抜去して退院した.
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