カラーグラフ エキスパート愛用の手術器具,手術材料・5
マイクロ波凝固装置
才津 秀樹
1
,
高見 裕子
1
,
和田 幸之
1
,
龍 知記
1
,
立石 昌樹
1
Hideki SAITSU
1
1国立病院機構九州医療センター肝臓病センター外科
pp.573-577
発行日 2009年5月20日
Published Date 2009/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102550
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はじめに
現在,肝切除は安全で普遍的な手術手技の1つとしてほぼ確立されているものの,20~30年前までは最も死亡率の高い危険な手術であった.その大きな原因の1つは術中の大量出血であった.そのため,Tabuseら1)によって肝切除の出血制御の目的で開発されたマイクロ波凝固装置(microwave tissue coagulator:以下,MTC)は超音波メスや術中超音波検査などとともに肝切除には欠かすことのできない手術機器となった.
ところが,MTCが肝切除断端の膿瘍形成や胆汁瘻の原因になるとの報告が多数散見されるようになったため2),多くの施設でMTCは次第に使用されなくなった.しかしわれわれは,肝切除断端膿瘍や胆汁瘻の原因はMTCを使用したかどうかではなく,大量の凝固された肝組織を遺残させることと凝固された胆管断端がそのまま放置されていることにあると考え,超音波メスで凝固された肝組織を徹底的に破砕・吸引してしまい,また,脈管や胆管の結紮は凝固されていない部分との境界部で確実に行うことによって解決できたため,現在までMTCは一度もお蔵入りすることなく継続して使用している.
最近では,マイクロ波凝固壊死療法(microwave coagulo-necrotic therapy:以下,MCN)はもとより肝切除においても膿瘍形成や胆汁瘻を経験することは皆無となったため,MCNでは全例でドレーンは留置せず,また肝切除でも肝右葉あるいは拡大肝右葉切除以外はドレーンを留置しなくなっている.
そこで本稿では,MCNと肝切除における「マイクロ波」の使用上のコツと注意点を中心に述べる.
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