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要旨:十二指腸病変に対する手術に必要な膵頭十二指腸部の血管解剖について概説した.
〔膵頭十二指腸部の動脈,すなわち胃十二指腸動脈と上腸間膜動脈とのアーケイド〕
重要なアーケイドを形成する膵十二指腸動脈〔前上膵十二指腸動脈(ASPD),前下膵十二指腸動脈(AIPD),後上膵十二指腸動脈(PSPD),後下膵十二指腸動脈(PIPD)〕とその分枝はその名のとおりすべて膵頭部とともに十二指腸に血流を送る.同様に,同名の静脈はすべて十二指腸からの血液を還流する.膵実質の後面に存在する上述の動静脈はすべてTreitzの癒合筋膜と膵実質との間に存在する.ASPDは胃十二指腸動脈から分岐したのち,Vater乳頭部下方に向かって走行し,ここで膵後面に回ってAIPDに移行する.すなわち,AIPDは一般の通念と異なり膵後面を走行する.PIPDから胆管右縁を走行し,乳頭部に向かうPSPDあるいはPIPDに匹敵する太さの動脈が存在する.その太さと内容の重要性から,われわれはこれを「乳頭動脈」と名付けた.十二指腸第二部およびVater乳頭部を温存するためには,手術中にこの動脈を傷つけないようにしなくてはならない.
〔膵頭部から膵体部に向かう動脈,すなわち胃十二指腸動脈と総肝動脈とのアーケイド〕
胃十二指腸動脈と背側膵動脈とはアーケイドを形成しており,そのアーケイドは膵の上縁に沿って存在する.このアーケイドの動脈をsuperior-transpancreatic artery(上横行膵動脈,superior TP)と呼称することをわれわれは提案した.この動脈アーケイドの分枝の一部は十二指腸球部の血流に関係する可能性がある.
〔膵頭十二指腸部の静脈〕
前上膵十二指腸静脈(ASPDV)と前下膵十二指腸静脈(AIPDV)はアーケイドを形成しているのに対し,後上膵十二指腸静脈(PSPDV)と後下膵十二指腸静脈(PIPDV)は,ほとんどの症例でアーケイドの形成は認めない.
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