コーヒーブレイク
患者様は神様です
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.313
発行日 2007年10月22日
Published Date 2007/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101917
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- 文献概要
外科医を長くやっていると,思いもよらぬことに出くわすことがあります.十分な術前検討と周到な準備をし,慎重に事を運んで予定通りにできたはずの手術でも,術後に思わぬことが起きることがあります.「運が悪い」で済むことではないにせよ,医学的にあり得ることと納得できはしますが,そんなことは落ち着いたときになって言えることで,その当事者や事が起こった直後にはそんな余裕があるはずもありません.とにかく,助かる側と助からない側の間にある高くまた極めて狭い塀の上を歩かされることとなります.
幸いにもしばらくはそんな武勇伝(?)になるようなこともなく過ごしていましたが,災いは忘れた頃にやってきました.事の詳細は読者の皆さんの経験の程度に合わせたご想像にお任せするとして,私も狭い塀の上を歩くことになりました.事が起こった当初はまさに五里霧中.とにかく夢中で手当たり次第に知識の引き出しを開き,また足りないところを聞きまくり,とにかく「あちら」に落ちることだけを防ぎました.そのうち霧も晴れ,次第に塀の行く先が見えてきますが,はたしてこれから狭くなるのやら広がるのやら,はたまた右へ行くのか左へ行くのか,見極めが求められることとなります.落ち着くまでは,ほかの仕事中はもちろん,夢のなかでもそのことを考えており,寝ても醒めても処置や処方を考え,「よくなった」と思ったら目が醒めて夢だったということにもなります.
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