元外科医,スーダン奮闘記・18
日本大使の視察
川原 尚行
1
Naoyuki KAWAHARA
1
1NPO法人ロシナンテス
pp.1399-1401
発行日 2007年10月20日
Published Date 2007/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101858
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救急車を引き取れるか
日本の大使が7月28日に当診療所を訪問することになった.偶然にも隣村の学校建設を日本大使館が行い,その引き渡し式に参列する予定で,そのついでとは言え当方としては大変喜ばしいことである.大使は通常の姿をご覧になりたいらしく,州政府にはまったく話をしていなかったようである.
私はちょっと姑息な手(外交手腕)を使い,日本大使の訪問を機にガダーレフ州知事に救急車の件で話を詰めてもらおうと考えた.そこで,わがシェリフ・ハサバッラ村の首長であるハサンとともに知事に懇願に行った.多忙な知事であったが,再び私たちに会ってくれた.28日まではまだ2週間あり,十分な時間があるので問題はないとのこと.大使が視察のときは,きちんと救急車の引き渡し式ができるように手配するとのことであった.この発言を一番喜んだのは州の保健大臣ではないであろうか.今まで散々,州保健大臣にこの話の決着を迫っており,さらに救急車の最終アドレスは州保健大臣であり,何もできない州保健大臣に私は何度となく詰め寄っていたからである.ほとんどの人は「州知事がああ言ってくれたのでもう安心だ.救急車はすぐ手に入るよ」と言うので,私も楽観視していた.なにせ州知事の権限は幅広く,連邦政府の大臣と同じ地位であるらしい.
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