書評
Asher Hirshberg/Kenneth L. Mattox(著),行岡 哲男(訳)「トップナイフ 外傷手術の技・腕・巧み」
重松 宏
1
1東京医科大学・外科学第2
pp.1082
発行日 2007年8月20日
Published Date 2007/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101798
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腹腔内出血で腹部は膨満し,意識レベルは既に患者の血圧とともに低下し,呼吸は促迫して脈は微弱,「瘤破裂だ!」,ストレッチャーを駆けるように押して手術場に運ぶ,正中切開とともに血液は噴出して吸引が間に合わない,小網を指で分けて腹腔動脈上で大動脈を把持して遮断鉗子をかける,途端に血圧低下が止まってパンピングする輸血とともに血圧は上昇に転ずる,執刀から遮断までこの間5分,というように診断・治療が容易であればよい.
が,外傷ではそうはいかない.噴出する出血,裂けた肝臓を助手に把持させても止まらない,「出血部位はどこだ! 肝破裂だけではないぞ!」,後腹膜は血腫でせり上がっている,警告音が頭の芯で鳴り響く,「まずい,どうしよう,間に合うか」,別の自分が語りかけてくる―ここから先は本書を読むのがよい.
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