昨日の患者
病気になるのもいいもんだ
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.870
発行日 2007年6月20日
Published Date 2007/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101776
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病気になると人は歎き悲しみ,落ち込むのが普通である.特に癌に罹患すると落ち込む度合いは深く,人生を悲観する人さえ現れる.しかし,病気をも天が定めた試練と捉え,前向きに思考する人がいる.
Mさんは3人の子供と7人の孫を持つ80歳代前半の女性であった.食欲不振と著明な体重減少を主訴として来院した.精査を行うと,進行期の胃癌であった.そこでMさんに悪性のため手術が必要なことを説明した.すると,より詳しい説明を求められたため,進行期の癌であり切除しても再発が予測されること,さらに高齢なため種々の合併症が生じる危険性があることを付け加えた.するとMさんは,「この歳まで子供や孫に囲まれ幸せに過ごしてきました.たとえこの先が短くても思い残すことはありません.少しでも可能性があるなら,手術をお願いします」と,動揺することなく手術に同意した.
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