ひとやすみ・19
印象深い患者
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.566
発行日 2007年4月20日
Published Date 2007/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101767
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- 文献概要
永らく教師を勤めた私の両親によると,「教師にとっての印象深い教え子とは,素直で勉強がよくできた生徒では決してない.手がかからなかった生徒はあまり印象になく,逆に登校拒否,喧嘩,盗み,家出など数々の問題を起こした生徒ほど印象に残るものである.そして,これら問題児ほどいつまでも担任教師を慕ってくれることが多く,優良児ほど恩師を忘れやすい」と.
外科医にとっての印象深い患者さんとは,いかなる患者さんであろうか.つつがなく手術が終了し,合併症や再発もなく経過した患者さんはほとんど印象に残らない.一方,何時までも印象に残るのは,手術時に重大な偶発症が生じたり,術後に合併症が生じて苦労したり,再発を繰り返して不幸な結末を迎えた患者さん達である.そして,苦労して救命し得た患者さんほど意思が通い合い,いつまでも親しみをたがいに持つものである.ただし,元主治医として忸怩たる気持ちも抱くが.
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