話題
日本の印象
Peter O. Bishop
1
,
岩間
1オーストラリア国立大学生理学
pp.194-196
発行日 1975年4月15日
Published Date 1975/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903053
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Ⅰ.日本における視覚神経生理学の現況
中枢神経系を研究するのにはたくさんの方法があり,対象として選ぶレベルもさまざまであるが,脳なるものの理解にはそのいずれもが大切である。ただ,近年になつてとくに有効と認められるものとして,単一ユニットの活動を記録するという方法がある。最近の著しい視覚神経生理学の進歩は,すべてこの方法によつているといえる。私自身のことをいえば,視覚系の単一ユニットの電気生理学が専門である。この研究領域のなかには,大きくわけて二つの型の研究がある。一つは,視覚系のなかのニューロン回路を分析したり,他の系との結合の様式を研究するものである(回路分析の研究)。他は,視知覚の根底にある神経機構をさぐる研究である(生理学的心理学の研究)。視覚の生理学的心理学では,単一ユニットの受容野なるものが中心概念になつていて,その性質を分析することや多数受容野間の相互干渉の法則を明らかにすることなどが研究の大勢になつている。
日本がとくに強く,世界での指導的な生理学者を生んでいるのは,ニューロン回路を分析する研究領域であることはいうまでもない。しかし,生理学的心理学となると世界の他の国と同じように,日本ではこの学問が十分に発展しているとはいいがたい。
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