書評
外科医のための局所解剖学序説 第2版―佐々木克典 著
森 博隆
1
1福島県立医科大学・血液内科学
pp.947
発行日 2022年11月20日
Published Date 2022/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207696
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著者の佐々木克典先生に教わっていた学生の頃,膝を叩きながら本書の初版を読んだ.解剖の質感が伝わる語り口に加えて,初版にも第2版にもその序文に,人体を深く理解するにはカギになる構造があり,それはちょうど幾何学の補助線を引くことで難しい問題がたちまち解決する感覚に似ている,と書いてある通りであったからだ.その考えを「第Ⅰ章 頸部」から早速実感できる.特に筋・神経・血管と入り組んだ構造を鰓原性囊腫という奇形を補助線として鮮やかに解き明かされているところは必読である.
「第Ⅱ章 胸部」は本書で最もページ数を割いて,解剖の基本を丁寧に説明している.初めて先生の解剖学入門の講義を受けたことを思い出した.どの章も体表解剖から始まるが,この章の体表解剖は他の章より長く,しかしランドマークは胸骨だけで重要な脈管の走行と心臓の構造とを関連付けている.それはちょうど優れた臨床医が患者の些細な仕草を一見して病気を診断しているようで,熟知しているとはこのことを言うのだろう.心臓・肺の解剖は読むのに体力が要るが,どの節よりも多彩なFigureを見ながら一つひとつ理解して読み終われば,それらの構造を手に取るように理解できる.学問に王道はないのだと言われているようだが,その王道は決して無味乾燥な道ではなく,他の解剖学書にはないような視点からの景色が見えて面白い.
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