胃と腸ノート
Boerhaave症候群について―消化器病学の用語をめぐって
竹本 忠良
1
,
田中 三千雄
1
1東京女子医科大学消化器内科
pp.640
発行日 1974年5月25日
Published Date 1974/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111870
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“特発性食道破裂”は別名Boerhaave症候群と呼ばれ,欧米で300例以上,本邦で20数例の報告がある,人名辞典によれば「ブールハーフェ」と発音するらしい.postemetic ruptureとかeffort ruptureあるいはspontaneous ruptureともいわれる症例を1724年最初に報告した人はHermann Boerhaave(1668~1738)で,彼はオランダの有名な学者であって,ライデン大学の医学,植物学,化学の教授をかねた学識豊かな人であった.70頁にもおよぶ原著にはオランダの艦隊長Baron van Wassenerの人柄の描写からはじまって,過食後の嘔吐から死にいたるまでのさまざまな症状,さらに剖見所見の詳細が熱っぽく述べられている,この原著は3回位英訳されているが1),それを通じて,観察と記録に徹した彼の科学者としての姿勢を十分にうかがうことができるし,読物としてみても,普通の症例報告とまったく異質でおもしろい.
本症候群の原因はMallory-Weiss症候群と同様,飲酒などによる悪心・嘔吐をはじめ,時には喘息,腹部打撲,排便,分娩等による食道内圧の上昇とともに,食道の運動失調が関係するといわれている.通常,食道の長軸にそった単一の病変で,2~8cmのたてながの形をしており,下部食道で,ことに左側に多い.この部位は1930年Marchによって解剖学的に弱いことが指摘されている.
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