臨床外科交見室
内痔核に対する新しい硬化剤(ジオン®)による硬化療法は痔の治療法を変えるか―「ジオンセンター」設立の提言
岡崎 誠
1
Makoto OKAZAKI
1
1市立伊丹病院外科
pp.366
発行日 2007年3月20日
Published Date 2007/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101231
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2005年3月から,内痔核に対する新しい硬化剤であるジオン®の使用がわが国も開始された.長年にわたってわが国で使用されている硬化剤のフェノールアーモンド油(パオスクレー®)は出血には非常に有効であったが,脱肛に対しては効果がなく,また,有効期間も6か月から1年と限定的であった.ジオン®は中国において消痔霊という名前で,Shiら1)によって内痔核根治の目的で開発された薬液を日本人に合うように,成分に一部改良を加えた痔核に対する硬化剤である.主成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸で,前者が収瞼作用,止血作用,起炎作用を有し,後者は硫酸アルミニウムカリウムの働きを調節する作用がある.ジオン®は出血・脱肛ともに有効であり,また効果もパオスクレーよりは永続性があり,手術とほぼ同等の効果があるとされている.非常な期待を背負って発売され,現在(2006年8月末)まで約2万例の症例に対して使用されている.厚生労働省の指導のもと,使用にあたっては重篤な副作用を回避するために,医師であれば誰でも無作為に使用できる制度ではなく,内痔核治療法研究会が中心になって使用できる医師を選定し,肛門疾患に精通した医師で,かつ講習を受けた者にのみ許可されている.
実際に使用を開始してみると,脱肛を伴う内痔核には非常に効き目がよく,特に手術と比較すると術後の患者の苦痛は比較にならないほど軽度である.局所麻酔で十分に施行が可能であり,患者に対する負担は軽く,入院期間も2~3日で,費用も通常の手術と比較すると1/3程度である.また,高齢者に多く,治療が困難である直腸脱にも有効である.
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